避難情報を的確にするには

鹿児島市の7月3日の市内全域への避難指示が適切だったかについて、毎日新聞が9日朝刊で特集しました。見出しには「避難対象限定 難しく」とあります。同市では、全市避難指示で「市民一人一人に安全な場所かどうか考えてもらい、状況に応じて避難してもらう必要があった」と理解を求めていますが、以下は私の個人的見解です。
(写真は鬼怒川決壊現場 = 一般財団法人 消防防災科学センターより)
◆ ハザードマップという名称でヒットしない
鹿児島市は防災や市民生活全般にかかわる便利な「鹿児島 i マップ」という優れたWeb 地図を作っていますが、ハザードマップという名称ではヒットしません。またWebでは全市民に伝わりませんから、印刷物など知らせる方法をいくつも用意する必要がありますが、実情はよくわかりません。
◆ 避難所がいっぱいに
また、避難所がいっぱいになり、避難してきた人に他へ行くよう指示したところもあったそうです。予定人数を多少オーバーしたとしても、譲り合ったり使用予定でない場所を開放して収容する事もできるはず。事情はよく分かりませんが、緊急の避難指示なのに雨が降り続いている中を追い返す、などというのは不親切というだけでなく大変危険です。私たちも、避難所開設に携わる時にはこのようなことのないようにしなければなりません。
◆「警戒レベル」の分かりにくさ
国は今年3月に、気象庁の警報と自治体の避難情報をセットにして5段階にした 「警戒レベル」 を制定し運用を開始しましたが、これも必ずしも分かりやすくない。まず気象庁の警報と自治体の発表する避難勧告・避難指示は別個であることがあまり知られていません。そして避難情報は住宅個々の事情を反映せず、地域全体を指定するという画一的な情報であるため、どうしても信頼性に欠けます。
◆ 避難情報の対象地域を区分する
思うに、避難情報の対象地域を町内や地区といった行政区画で指定するのではなく、浸水危険地域を予想浸水深A =0.5~3m、B =3~5m、C =5m以上と3区分し、土砂災害危険地域を1つの区分 D とし、あわせて4区分の区域に対して以下のように避難情報を発するのが良いのではないでしょうか。
① 予想浸水深 0 m の区域や3~4階建以上の建物には避難勧告・指示を発令せず、むしろ親類・友人知人の避難を受け入れるよう勧奨する
② 予想浸水深 A の区域は垂直避難を推奨する。災害時避難行動要援護者など、垂直避難が困難なら事前水平避難を。
③ 予想浸水深 B・C の区域は事前水平避難とする
④ 土砂災害危険地域の D 区域は事前水平避難を原則とするが、やむをえない場合は垂直避難を認める
という具合です。このためには、市民に対して日頃から自分の住む所の区分を周知することが必要です。また東京下町で実施しているように、予想浸水深を示す表示板を各所に掲出するのが良いと思います。