上尾市防災士協議会 (ABA)
4.マンションの防災対策
-ABA 防災マニュアル 2023 p9 -
◆ マンション・共同住宅の注意点
個人住宅と共通する対策の他、共用部分のチェック が大切です。
必要な場合は使用禁止などの措置をとります。
*エレベータ (安全確認、閉じ込めがないか)
*給水設備 ➡ 断水対策へ
*排水設備 ➡ トイレ対策へ
*渡り廊下、外階段、照明設備などの安全確認
◆ 壁への家具転倒防止造作の可否
建物の構造にもよりますが、上層階は特に揺れが大きくなりやすいので、建物の倒壊は免れるとしても、家具・家電の転倒防止はたいへん重要です。
壁などへの造作は、区分所有なら可能ですが、賃貸の場合の造作禁止が問題。いのちを守るための工事ができないのは制度の不備とも考えられます。
東京都港区では区営住宅などで工事を可としたそうです。自治体やURなどに対して働きかけていくことが必要です。
◆ 通信対策
上尾市柏座一丁目で大型マンション10棟が加盟するマンション連絡協議会では、通信の途絶や輻輳時に備えて簡易無線機 (無線局登録あり) を購入・配備する計画を進めているそうです。大規模なマンションや団地では、簡易なトランシーバーでは建物自体が障害物になるので、出力が大きい無線機材が威力を発揮しそうです。
また、アマチュア無線家との連携も考えられます。
◆ 断水対策
*給水施設の型式と安全確認を。
*中高層階用に水リュックを。
停電時に水を運ぶのは大変です。
*貯水タンクに水袋でリフトアップ
白岡市新白岡グランガーデン区民会では、屋上の受水槽に10 ℓ の水袋を発電機でリフトアップして給水する訓練を行っているそうです。
*風呂の残り湯。
トイレの使用停止中は流せませんが、断水だけで下水管がOKの時には使えます。また、沸かしたり、高機能浄水器を使えば飲用もできます。
ただし、特に中高層階では大きな揺れで湯船からこぼれてしまい、かなり目減りすることを考慮する必要があります。
◆ 下水の使用可否確認の手順
熊本県益城町のマニュアル を参照しましょう。
◆ トイレ対策
敷地・建物内の下水管が損傷すると、流した汚水が下層階住戸に噴き出すことがあります。
このため近年では、大地震時 (震度5強以上) には各住戸のトイレの使用を全面停止し、点検確認を終えるまで使わないのが望ましいとされています。(使用確認手順は上記益城町マニュアルを参照)
その場合の対策は大きな課題であり、管理組合などで協議しておく必要があります。
*住戸トイレ ・共用トイレ
下水管点検中は ✖ 全面使用停止
下水管不通時は ✖ 〃
断水だけなら風呂水で流す 〇
停電だけなら手動操作で流す 〇
*マンホールトイレ
〇 事前設置し、訓練しておきましょう。
▼ただし、エレベータが点検や停電で停止すると、上層階では1階への昇降が困難になるので、万能ではない。
✖下水本管や処理施設が故障した時は、使用不可能になることがあります。
*非常用携帯型トイレ
〇 使用可。ただし1人1日6回分程度の備蓄が必要。(小水は数回使い回しも)。消臭剤を使っても、密封できる容器など長期保管時のニオイ対策は必要です。
▼ 緊急時のみ使用可。ただし普通のものではニオイがするので困る。長期保管時のニオイ対策は必要です。
*非常用密封型トイレ
△ 特別な器具でビニール袋を完全密封しニオイをシャットアウト。ただし高価なので、各戸ではなくフロアごとに設置するなどが考えられます。
<ご注意>
固化タイプ以外の非常用トイレ汚物の回収は、 通常タイプのゴミ収集車では破裂するので、平積みトラックで収集することになります。通常ゴミと別途の作業となり、大災害時には回収にかなりの時間がかかると思われますので、ニオイ対策が重要になります。
それを考えると、高価ですが 「非常用密封型トイレ」 も選択肢になるでしょう。
(参考)
横浜市総務局 危機管理室
国土交通省 水管理・国土保全局
マンガで解説。利用自由で分かりやすい。
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