災害時の集団心理
最近、ヒトの無意識を科学する 「隠れた脳」 という本を読んで、「津波テンデンコ」 に通じる科学的な分析があるのに驚きました。
(シャンカール・ヴェダンタム著、渡会圭子訳、(株)インターシフト 2011年、上尾市図書館本館 所蔵)
「思いがけない災害にあったとき、人は無意識に周囲の人たちとの合意を求める。その集団が大きいほど、同意に達するまで時間がかかる。人間は危機に瀕すると、助けと次の行動の指示を集団に求めるようにできているのだ。」(164-165p) 「追い詰められた人々は、たとえ貴重な時間を失っても、まず周囲の人たちとの意見の一致を求める。たとえ同僚が誤った方向に向かっているとわかっていても、互いの行動を真似し合い、たとえ逆効果になったとしても、互いに助け合うのだ。」(166p)
これを読むと、7年前の2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災の津波で児童74名と教職員10名が亡くなった、石巻市立大川小学校の悲劇を思い浮かべずにはいられません。大川小のことはさまざまに論じられていますが、人間心理に基いた見解は少ないと思います。この本の原著出版はその直前2010年ですが、大川小学校で起きた悲劇の様子を予見しているかのようです。集団に判断を求めず、個人で判断し行動すること、いわゆる 「テンデンコ」 は大変に難しいことだということです。
危機に瀕した時、リーダーの役割がいかに大切か。いざという時のために訓練と知識の蓄積を怠ってはならないと、あらためて自覚させてくれる本でした。